10/07/2020 17:07:52, 本, 小池 滋

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世界の駅・日本の駅 pdf無料ダウンロード - 内容（「BOOK」データベースより） 啄木が“ふるさと”をなつかしみ求め、帝国主義をとる欧米列強が“権力誇示”の装置として用い、大手私鉄会社が集客のための“宣伝媒体”として用いた鉄道駅。時代・地域に応じて多様なイメージを集束してきた鉄道駅を丹念に読み解く11章。 レビュー 本書は、駅と社会との関係を、都市、建築、文学、映画、絵画、音楽など、さまざまな切り口から捉え、「駅とは何か」について、それぞれ回答を試みたものである。編者3氏をはじめとする執筆陣は、いずれもその道のオーソリティであり、これを評するのはおこがましいところではあるが、あえて感じたままを述べてみたい。 都市(集落)の立地は、徒歩と馬車を主たる輸送手段とする時代においては、地理学者クリスタラーの中心地論に代表される比較的均質なものであったと推察される。しかしながら、産業革命以降の鉄道の展開は、同じ地理学者ヘーゲルストランドの時間地理学が規定する制約条件のひとつである人や物の時間的空間的制約を大きく変革し、鉄道と地域社会をつなぐ窓としての「駅」が存在感を増してゆくこととなる。鉄道の技術的・経営的条件により決定された駅の位置が、その後の地域構造を決定づけた事例も数多い。さらに電気鉄道の発達により、居住地と就業地の分離が可能となることによって巨大都市が成立し、「駅」は万人の利用する中核施設として、その存在が確固たるものとなってゆく。本書において取り上げられている駅の多くは、こうした時代に生まれるか、あるいはこうした時代を経過したものであろう。 しなしながら、その後の道路整備、マイカーの普及により、「駅」の地位・姿は大きく変わった。ロードサイドが繁栄し、中心地街や駅前商店街の衰退が各地で問題化。鉄道の存在が商圏をせばめるとして、駅前立地が嫌われる状況まで発生している。本書第1章の「都市の形成と駅の立地」が指摘するとおり、「駅が街の顔」というのは多くの地域で過去形となったのである。大都市圏においては駅ナカビジネスが盛んであるが、その背景には、鉄道の利用が通勤中心となり、マーケットを軽飲食、惣菜、雑貨、書籍、ドラッグ等に絞りやすくなったという側面もある。こうした状況では、駅には個性は生まれにくい。 駅の復権をもたらすのは、やはり「環境」と「少子化」「高齢化」をキーワードとした「コンパクトシティ」の指向であろう。「駅」を中心とした徒歩・自転車、公共交通主体の街づくりは、すべてとは言えないまでも、より多くの人々の目を駅に向ける契機となる可能性があり、本書第9章の「駅舎の保存と活用」にも、そうした事例がいくつか紹介されている。しかし、残念ながらこうした潮流が不可逆的であるとも言いがたい。政策面では高速道路の料金引き下げ、無料化が語られ、欧米では定着した感のあるLRTをめぐる風潮も、わが国では富山をのぞき、必ずしも順風とは言えない。個性ある魅力的な「駅」創造への道は、なお険しいと言わざるをえないのである。(平田一彦) --『鉄道ピクトリアル』2010年11月号 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 小池/滋 1931年生まれ。東京大学文学部卒業後、東京都立大学や東京女子大学で英語・英文学の教師を勤めた。専門の英文学関係の著書・邦訳書の他に、鉄道関係の著書・訳書もある 青木/栄一 1932年生まれ。東京教育大学大学院理学研究科博士課程(地理学)修了。理学博士。東京学芸大学名誉教授。日本地理学会名誉会員。鉄道史学会会長、歴史地理学会会長などを歴任。主として交通地理学の研究に従事 和久田/康雄 1934年生まれ。東京大学卒業後、運輸省、日本民営鉄道協会、日本鉄道建設公団などに勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 続きを見る

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